シールド推進工事などの作業において、既設構造物の杭にシールドマシンが衝突する事故が増えています。こうした事故を未然に防ぐために、事前に杭の長さや杭位置を把握することが必須となってきており、近年「杭調査」の調査需要が高まっています。
また河川橋梁などの改修工事の際にも、事前に杭の長さや配列を調べることで、より安全な土木工事のための基礎資料をつくることが可能です。
主な調査方法は以下の4種類があり、対象物に応じて最適な調査手法を選択・調査することで最良のデータ取得を目指します。
各調査手法の比較表
基礎杭根入れ調査における主な調査手法
ボアホールレーダー探査
「ボアホール・レーダー」は地中レーダー探査で使用するアンテナをボーリング孔に挿入できるように改良することで、構造物基礎杭の根入れ深度や配列を把握することの出来る新しい探査方法です。
アンテナから構造物基礎杭に向けて放射された電磁波(電波)が、伝搬媒体となる土や地層と電気的性質の異なる物質(杭などの構造物)に当たって反射します。
その反射波を再びボーリング孔内のアンテナで受信することで二次元断面図として杭の長さを表すことができます。
- ◆ 長所
- 探査精度が高い
- 電波に指向性があるため杭の位置もある程度把握できる
- 斜坑ボーリングを併用することで杭の配列も調べることができる
- ◆ 短所
- 電磁波の伝搬距離が短いため構造物とボーリング孔を近接する必要がある(50cm未満)
- アンテナの耐水圧から30m以深は計測不能
- 土質によって反射波が検出されない場合がある
ボアホールレーダー探査について
弾性波・速度検層
「速度検層」とは、ボーリング孔内に受振器(ハイドロフォン)を設置した状態で、構造物のコンクリート面または杭自体をハンマーで打撃し、弾性波動を発生させ、孔中受振器でその波を観測することで、構造物基礎杭の根入れ深度を把握することのできる従来型の探査方法です。
- ◆ 長所
- 探査精度が土質や杭種などに左右されにくい
- 構造物とボーリング孔がやや離れていても探査可能(1m程度)
- ◆ 短所
- 構造物または杭を直接打撃しなければならない
- 現地(現場)で杭長の判断が難しい
- 構造物周辺に振動ノイズが存在しないことが望ましい
弾性波・速度検層について
磁気検層
「磁気検層」では、ボーリング孔内で両コイル型磁気傾度計(検知器)を緩やかに吊り上げながら測定を行います。
斜孔ボーリングでの測定、ボアホール・レーダー探査、速度検層を併用することで様々な目的へのアプローチが可能となります。
- ◆ 長所
- 計測作業が比較的簡易的であるため、他の手法よりも経済的である
- 構造物とボーリング孔がやや離れていても探査可能(1m程度)
- ◆ 短所
- 概査的な調査手法のため精度を高める場合は他の手法との併用が必要。
- 鉄物以外には反応しない
- 杭周辺に杭以外の磁性体が存在しないこと
磁気検層について
インテグリティ試験
ハンマーなどで構造物を直接打撃し、杭先端からの反射波を地表で受信することで杭長を把握することができます。
- ◆ 長所
- ボーリング孔を必要としない
- ◆ 短所
- 構造物または杭を直接打撃しなければならない
- 杭底以外の反射波との区別が必要
- 杭の弾性波伝搬速度値を家庭しなければならないため、誤差が生じる場合がある
インテグリティ試験について